「一生に一度の結婚式をなんだと思っているのですか!?」
そんな罵声にも似た批判を受けたことが僕はこれまで何度かあります。それはすべてブライダル業界を冷静に分析したときに、かけられた言葉でした。
例えばこんな議論の際。「どうなる?これからのブライダル業界」です。僕はそんなとき、よくこう答えます。
どうなるかなど分かりません。ただ言えることは、もっともっと多様性を求められると思います。極端な発想ですが、結婚式をネット上だけで済ませる「LINE結婚式」とか「ニコニコ動画結婚式」みたいな発想が必要になるんじゃないですかね?
こういうことを言うとブライダル業界に染まりきった方からは、嫌悪感を感じられるようです。「そんな結婚式イヤだ、あり得ない!」と。そんな流れで「一生に一度の結婚式をなんだと思っているのですか!?」的な言葉に繋がっていくのです。
いち顧客に対して「一生に一度」という想いを持って仕事に当たるのは当然です。サイコーウェディングでもそのように指揮してきました。しかし冷静なマーケット分析、という観点ではそれは大きく間違っています。
ブライダル業界では「結婚式を諦めないで!」という宣伝フレーズがよく使われます。
宣伝文句としては特に問題ないと思いますが、これをマーケティングとして考えると少々いびつです。というのも、ブライダル業界の現在の大きな課題として、少子高齢化社会だから顧客がどんどん減っていく、というものがあります。
★だから単価をもっと上げよう
★だから結婚式を挙げない人をなんとか取り込もう
という発想に業界がなっているのです。
結婚式を諦めないで?いいえ、諦めてなどいないのです
「結婚式を諦めないで!」というのは後者の「結婚式を挙げない人をなんとか取り込もう」作戦の一環だと思うのですが、僕は「結婚式を諦めないで!」は結婚式をしない人には全くと言っていいほど響かないフレーズだと思っています。響くのは”結婚式はしたい、でも低予算でやりたい層”です。
現在数字上では50%の人が結婚式をして、もう50%の人が結婚式をしないそうです。ブライダル業界はしない層をなんとか取り込みたいと考えているのですが、その層はそもそも結婚式をしたいと思ってもいないと予想しています。つまり全くもって結婚式を「諦めていない」のです。
少子高齢化問題や、結婚式の費用のお話は二の次で、そもそも結婚式をしたくないのです。ここを履き違えているような気がするのです。しかもさらに厳しいお話をすれば、結婚式をする50%の中にも”結婚式をしたくない層”が非常に多く存在すると思われます。要は”仕方なく結婚式する層”ですね。
もはや結婚式をしたい層がマイノリティ。だからフォトウェディングは支持された
何が言いたいかと言えば、業界の中にどっぷり浸かると”結婚式をしたい層”ばかりに会うので、50%の人が結婚式をしないということが信じられなくなってしまうのです。だからその50%の人は経済問題か何か深刻な状況で結婚式を「諦めている」と考えるのです。
違うのです。もう”結婚式をしたい層”がマイノリティなの(かも?)です。
フォトウェディングというサービスがこれだけ浸透したことを考えてみて下さい。フォトウェディングは「結婚式なんてしなくていいじゃん!写真だけ撮ればいいじゃん!」というメッセージを発信しました。このメッセージは誰に響いたと思いますか?
どう考えても”結婚式をしたい層”には響かないですよね?だってその人たちは結婚式をしたいのだから。響いたのは”結婚式をしたくない層”です。この事例から見てもブライダル業界は業界を成長させようと考えるのであれば、既存の結婚式をサービスから外して考えなければいけない、という厳しいロジックに立たされています。
ブライダル業界で生き残るならブライダル(婚礼)を捨てる時代
だから僕は「LINE結婚式」とか「ニコニコ動画結婚式」みたいな未来を言ってしまうのですが、それを説明するのにこれだけ時間がかかります。でもそれを端折って伝えてしまうと、僕が希薄な人間と思われてしまうのかなと思います。まぁ、そう思われることに対して何も思いませんが。
ともあれ少なくともブライダル業界でマーケティングを冷静に考えるなら、そんな悲観的なイメージを持っていなくてはいけないと思っています。ブライダル業界が縮小傾向な第一要因は少子高齢化でも経済問題でもないのでは?僕はそう考えています。
ブライダル業界で生き残るならブライダル(婚礼)を捨てる時代ではないかと。
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